五木寛之著「青春の門」
人生で二冊目の本でした。
本好きで、自分ではたくさん読んできたほうだとは思いますが、
人と比べてどうなんでしょうかね?おそらく、そんなには大量
にはこなしてきてはいないかもしれません。読む分野が限られ
てましたしね。
五木寛之さんのエッセイや小説をよく読んできました。
だいたいが五木さんの本を初めて読んだのは、二十歳
になる前の世の中のことなど何も分からなかった、そう
ですねー、今思えば自分にとっては暗くて長く苦しい時
の頃でしたね。
まあ、それは今もって思い出したくもない時分のこと
と言っていいのかもしれません。
高校を卒業して、上の学校へ行くのに一年浪人すること
になったんですが、早々に予備校をやめてしまい、
アルバイトに熱中し始めていました。
地元、大阪駅構内で新聞を列車に積み込む重労働の
仕事に就きました。
現在はトラック輸送が発達してもうこの種の仕事はなくなって
いるんでしょうけど。
列車に新聞の束を人力で放り込む。懐かしいです。
それで、その仕事の休憩時間に五木さんの小説をしっかりと
握りしめていたものでした。
その本こそは
後に映画化されもした「青春の門」でした。
ところで、若い中高校生の時代には
に影響されてしまう人が多いと思います。
わたしも例にもれずそうでした。
で、五木さんのその本はわが人生で
「人間失格」に続く二冊目の本と言えるんです。
小説の中味は九州の炭鉱を舞台にした、暗くて重苦しいもの
だったですけれど、それでいて主人公の前向きに生きる姿に
読みながら内心何度も励まされていたのかもしれません。
五木さんはギリギリのところで?人生を肯定されます
からね。!
だから、そんなところでファンが多いのでょうけど。
わたしは彼の本、全部を読んでいるわけではないですが、
ここ京都で働くようになったある時、
一度、古本屋で、五木さんが書いた昔の恋愛小説ものを
見つけて思わず買ってしまったこともありました。
それは今までに違った五木さんの書物でした。
あの芥川龍之介なども一風変わった小説を
書いているらしいけれど、作家さんというのは
いろんな面があり、それぞれに沿った内容の本が
書けるもんなんだなあ~と不思議と納得したものです。
そう言えば、その本を読んで、はからずも
涙ぐんでしまってましたかねー。
恋愛ものは直に響いてきて、内部に宿る熱は
すごいものがありそうです。
氏の本をずっと順に追って読んできた
わけでもありませんが、
思うのは五木さん自身、何かしら死に近しい作家と
言いますかねー。
いつも自分の死の準備をしながらずっと過ごしてき
た物書きであるように見受けられます。
どの本を読んでいても、それはすごく感じます。
最後は、死ぬことなんて全然恐いことないし、
生きることと同じことなんだよと呟いて、
死地に向かわれる、そんな方だと思うのです。
生きること、そして死ぬことについてとことん見つめてき
た人で、だからこそ日々、すべきことを後悔なくやり過ごし
ながらも、後の時間を大切に生きておられる、そんな気が
します。
この先、ゆっくりと歩いて行って頂きたい、
長生きして頂きたいと切に願っているのです。